【追記】あり 逢ひにゆく八十八夜の雨の坂 藤田湘子
いやー、驚いた・・・、というか自分に呆れてしまった。
掲句は、欠かさず見ている月初めの日曜日の回の 「NHK俳句」で、投稿句の選者である宇多喜代子さんが先日紹介した句である。
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見るなり、いい句だなぁ・・・と思った。
「逢いにゆく」、そして「夜」の文字、さらに「坂」・・・。
たちまち、向田邦子の原作で久世光彦の演出によるドラマの中の、あの迷いをふっきった顔の、田中裕子が浮かんできた。(私、今もファンです)
そして、たしかに見覚えのある作者の藤田湘子の名前は、ショウコとばかり思っていたが、ショウシと読むことを恥ずかしながら宇多さんのお陰で初めて知った。
それで、その俳号かも知れない名前の人は、ほかにどんな句を詠んでいるのだろう・・・と気になった。
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日頃よく見るwebの『増幅する俳句歳時記』で名前を検索してみると、いきなり冒頭に掲げた句が載っていた。
その他の句もたくさん載っていて、私好みの句が幾つもある。
そうして目に入ったのが、この句だった。
愛されずして沖遠く泳ぐなり 藤田湘子
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あの人だったんだ・・・。
もう10年以上前のこと、私が俳句をやり始めて間もなく、まずは名句とはどんなものかと思って、本屋に行って買ったのが文庫本の「覚えておきたい極めつけの名句1000」(角川文庫)。
この句は、その1000句の中でも特に印象に残った句の中の一句だった。
目に浮かんだのは、まだ中学生くらいだろうか、昔のフランス映画『悲しみよこんにちは』のヒロインの、あのセシルカットみたいなボーイッシュな髪で、昔々の競泳選手みたいな紺色のワンピースの水着で泳ぐ少女だった。
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きっと片思いなのだろう、いや、ひょっとすると家庭に何か事情があるのかも知れない・・・。
やり場のない悲しみを胸に彼女は、ひたすら、ただひたすら、逃げるように沖のほうへと泳いでいる。(きっとクロールで)
なんと瑞々しい感性の句なんだろう・・・。
こういうのって、もし男で詠めるとしたら・・・、そう、石川啄木かなぁ、なんてことを想った記憶がある。
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もしかして、湘南の海の近くで育った人で、それで湘子(
ショウコ)という名前なのかも知れないなぁ、なんてその時に思ったことも憶い出した。
そんなこんなを、なにもかも忘れてしまっていた。
そこで更めて、この藤田湘子さんとはどういう人なのか、そして、どんなお顔なのかを調べてみることにした。
さっそく、まずはウィキってみると・・・。
湘子さんは女ではなくて、男だった。
【追記】ほんと、愕然としました。
湘子さんには悪いけど、オトコかよ!!って感じでした。
なにしろ、あの田中裕子が、いきなり、“ 傘がない〜 ” の陽水ですからね。(陽水のファンですけど)
それに、CMに登場したばかりの “なっちゃん”、あの時の田中麗奈みたいなイメージの泳ぐ少女も・・・。
思い込みってコワイな・・・って、つくづく思い知らされました。
それにしても藤田湘子さん、もうだいぶ前にお亡くなりになられている方でしたが、素晴らしい句を残されてますね。
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