秋の味覚の一つに、衣被(きぬかつぎ)がある。
実は、この衣被というものを初めて目にし、口にしたのは、なんと四十代も後半になって東京に転勤してからのことだった。(北海道では芋といえばジャガイモが主流)
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それは部署の飲み会の流れで、その日の一次会の幹事だった若手の一人を労うために行った小料理屋の、たしかお通しとして出てきたように記憶する。
「きぬかつぎ」というどこか床しい名のそれは、頭を切って皮を摘んでつるりと剥いて食べやすくしてあるだけの、要するに小芋を蒸したものだった。
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だが、それに、ちょんちょんと塩を付けただけの、なんとも素朴なその味が気に入った。
名前もよいが、味もいい。
それからは、秋になって小料理屋で目に入ると、すぐに注文するようになった。
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私は、いわゆる「関東の一つ残し」という、あの暗黙のルールってのが昔から苦手だ。
だから、皿などにいつまでも何か一つ残っているそんな時には、率先して若手に勧めて、それでも遠慮しているなら、もったいないから戴くよ〜!と宣言してさっさと食べていた。
衣被は、そんな見栄を張るほどのものでもなくて、余計な面倒があまりないのもいい。
衣被ひとつ残しのいやらしく 子瞳
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