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日々のしをり

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電通について

                       さらに追記あり

とうとうここまで・・・、というのが正直な気持ちだ。

電通のことである。

まだ新入社員だった女子社員の過労による痛ましい自殺が発端となって、今日ついに厚生労働省が本社をはじめ4事業所へ労働基準法違反の疑いで強制捜査に入った。

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実は私は、かつて30数年間この会社で勤務していた。

私も若い頃に、時にひと月の残業が200時間(!!)を超えるようなことが一度ならずあった・・・。

今にしてみれば、無茶苦茶というか、ほとんど狂気の沙汰だ。

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少し早く退職したので、今や会社を離れて10年近くになるが、現役を離れてもなお会社に想いを残すのは私の流儀ではない。

そんな恋々としている暇があるなら、芭蕉さんと同程度の生涯千句を目標に、残された人生一句でも多くの句を詠みたいというのが本音である。
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それでも、私も古いタイプなのだろうか、愛社精神というものは人並みに持っていたし、今でも些かなりとも持っている。

なにしろ、これまでの人生の半分をそこに所属して、社の内外で人との絆が生れ、とにもかくにもそこで生活の糧を得てきたのだ。

だからこそ、OBとして、もはや黙したままではまずいだろうという気持ちで、全く残念なことではあるが、ひと言述べようと思う。

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かなりまずいな・・・と思ったのは、今春のことである。

最早うやむやになっているが、パナマ文書に会社名が載っていたこと、そしてオリンピック誘致でのいかにも怪しげなコンサル会社(!?)への裏金疑惑が相次いで取り沙汰された。

その時、そうだ!公式の見解がきっと載っているだろうと気がついて、会社のHPを覗いてみた。

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すると、いろいろ探してみたが、どこにも、一行たりともそのことについての声明がないのだ。

見落としたという可能性が絶対ないとは言い切れないが、少なくとも目に付く所に無かったのは確かだ。

あらゆるコミュニケーションの領域を業とすることを社是としてきた会社のはずが、その初歩がどこにも見当たらない・・・。

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すると、そこに「 CSR( 企業の社会的責任 ) 」というカテゴリーのページがあった。

そのCSR委員会の委員長である執行役員の挨拶をはじめ、人権の尊重、労働環境の整備、公正な事業慣行などなど、立派なお題目がずらっと掲げられている。

だが、何ページにも亘るこのカテゴリーの解説はこれでもかとばかりあるのだが、肝心のその公正な事業慣行に関わる声明はやはりどこにも見当たらない・・・。

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さらに見て行くと、メールでの問い合わせ欄が。

それならばと、その委員長に宛てて、自らの名前などを明らかにして、メールを送ることを思いついた。

不躾ながら今般の事態をOBの一人として深く憂慮していること、そして、CSRを掲げるならこういう時こそ、速やかに社の見解を公表すべきではないかという主旨のことを述べた。

そして、文末に私のメールに返答していただければ幸いであると言葉を添えた。
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だが、そのメールを読んだ担当者が忖度して握り潰したということも考えられなくもないが、それ以来全く梨の礫、例によってHPは何事もないかの様である。

この会社はこの先果たして大丈夫なのだろうか・・・、ということが頭をよぎった。

私は北海道の勤務が長かったこともあって、いくらドンガラがモダンで立派でも、社会の良識を逸脱したり、時代の変化に対応できなければ、企業なんてアッと云う間に潰れるんだということを幾つも目の当たりにしてきた。
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私の入社当時はパワハラなんてその概念すら思いつかないような時代だった。

新入社員教育の時に、築地にあった本社ビルの1階のホールに、手作りのかなり大きな労働組合のポスターが張られているのに目が留まった。
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見ると、パステル画だったように記憶するが、夕焼けの下、草原に少々漫画チックな可愛いモクモクした羊が一匹描かれていた。

そして、その羊の足元からは黒い影が長く差していて、それは牙を剥いた狼のシルエットなのだ。

“ 我々は、いつまでもヒツジじゃない・・・。 ” というコピーが、そこに一行添えられていた。

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それを見た時に、なかなかいい会社かもなぁ・・・、と思ったことを、いまだに憶えている。

そんな、まだノーテンキだった頃の私と同じような年齢で自ら命を絶った彼女のこと、そして親御さんのことを思うと、ほんとうに悲しく、心底腹立たしい。





【追記】(11月8日午前記)

不思議でしょうがないのだが、この期に及んで、いまだに社の代表すなわち社長による対外的な公式声明の場が設けられていない。

報道によると、昨日の強制捜査が入った後で、社長が社員に対して事態の説明と今後に向けての方針を示したらしい。

それも勿論いいだろう。将として、兵の動揺を鎮めるのは当然のことだ。

しかし、まずなによりも自死にまで追い込まれた社員とご遺族に対して、そして、高々とHPに掲げている「人権の尊重」や「労働環境の整備」について、いったいどう考えているのだろうか、さっぱり分らない。

あまりに内向きに過ぎるのではないか。

誰も進言する者は周囲にいないのだろうか・・・。 揃いも揃って、会社が全宇宙とでも思っているのだろうか・・・。

あまりにもズレている。



【追記】(11月9日朝記)

今回、というか今春の不透明な金についての疑惑があった時もそうなのだが、更めて明らかになったことがある。

それは、経営を外部の視点でチェックする目的の社外取締役とやらが、厳しい社会の目に晒されていても、全く機能しないということだ。

その役職の方々がどれほどの報酬を手にしているのかは知らないが、末端では新入社員が文字通り死ぬ思いをして、身を粉にして働いていたのだ。

トップの周りが茶坊主ばかりというのは、古今東西なにも珍しくはないことだが、そういう時の最後の切り札として、その存在意義があるのではないか。

進言あるいは諌言しても、意に介さないという場合には、その職を辞するくらいの気概があってこその社外取締役だろう。

だが、その人選を誰がするかというと・・・。

そう考えると、結局はナアナア、社外取締役なんて所詮はお飾りなのは、まぁ、無理はないか・・・。




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by sido-nikki | 2016-11-07 19:25 | その他のこと | Comments(0)
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