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テレビドラマ『夫婦善哉』を観終わって


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最近4週にわたって放映されたNHKの土曜ドラマ「夫婦善哉」を観た。織田作之助の同名の原作による豊田四郎監督の名作のリメイク版、その時の主演は森繁久彌と淡島千景である。

それで思ったことだが、昔のモノクロームの映画や写真の持つ独特の陰影や深みは不思議なものだ。その表現が、しばしばデジタルによる精細なカラー映像をはるかに凌駕するのだ。

映像の技術的なことではない。リメイク版の映像は、丁寧な美術と相俟って、かなりのレベルに達している、と言うよりは高く評価できるレベルだった。
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問題は人物描写である。喩えるなら最初にボタンの掛け違えをしたように、このリメーク作品はとうとう最後まで「夫婦善哉」にならないまま終わってしまった。

それは、キャスティングの誤りである。主役の二人の内、蝶子役は尾野真千子、一昨年の朝ドラ「カーネーション」での主役でお馴染み、まあ納得のゆくところだ。

だが、相方の柳吉がどうしたことかあきれるほど暗い。役者は森山未來という人らしいが、これまで番宣か何かでちらっと見掛けたような気がするものの、全く知らない人だった。

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観ていて一向に楽しさがない。共感も一向に湧いてこない。それどころか回を追うにつれて、底知れない柳吉の暗さにほとんど辟易してしまったのだ。

この柳吉では、暗い陰を帯びた屈折しただけの男ではないか。そのせいで、この男にいくら踏みにじられても別れられない蝶子もまた、次第に依存度の強い存在に見えてくる。

なにも暗いのが悪い訳ではない。暗さも個性である。だが、この柳吉に限っては、役作り以前に、ちょっとワルっぽいが根が憎めないキャラクターでなくては「夫婦善哉」が成立しないではないか。

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織田作之助の「夫婦善哉」は決して過去の男と女の物語りではない。それは私達の周りに、それどころか世界中のいたる処に、きっと今も脈々と生きている男と女の物語りである。

そこには、男女を問わず観る者に、“ でも、しょうがないよなあ・・・ ” と思わせる魅力が柳吉にはなくてはならないはずだ。

つい苦笑いをさせられる可愛気と軽やかさ、そして色気を兼ね備えたチャーミングさが、かろうじて相互依存の強い病理的な男女の物語りから一線を画すのだ。
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では柳吉役は誰なら良いと思うのかと反論されても、歳のせいだろう、最近の俳優事情にとんと疎くなってしまって、すぐに答えられないのが残念だ。

40歳前後で、中肉中背・・・。色気はあるが、二枚目過ぎてもいけない・・・。蝶子のお父ちゃん役で出ていた火野正平が、もう20歳ちょっと若かったなら・・・、なんて思ったりもするのだが・・・。
     




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by sido-nikki | 2013-09-17 08:03 | テレビの話 | Comments(0)
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